不正歯列の種類

上顎の叢生

歯が並べないのは歯が大きいのではなく顎が小さいからです。
治療は早期に開始するべきです。
顎が小さくて歯が並びきれない歯並びです。

歯の生えるスペースがなく、並びきれていません。
上顎の叢生について、症例を5つ紹介します。
どれも実際にあった症例です。歯を抜かずに完治しました。

【症例1】 側切歯が内側に生えてしまった例

奥歯が咬んでいないで、横を向いています。

側切歯と呼ばれる2番目の歯が内側に生えています。
一見大変そうですが、乳犬歯と乳犬歯の間に左右の側切歯が入るスペースがあります。
左右の側切歯の前方移動のみの治療です。

装置の内に左右の側切歯の歯を後ろから押すネジがあります。
ネジを回して歯を後ろから押します。それだけです。
このケースは歯の移動の治療期間は4ヶ月です。とても簡単な治療です。
永久歯の犬歯が生えてきてからでは遅すぎます。
犬歯は位置のズレた側切歯に合わせ生えてきて、症例4・症例5のような八重歯になります。
そうなると、犬歯をずらさなければなりません。
また、症例3のように犬歯が側切歯をさらに内側に移動させてるケースもあります。
治療の開始が遅れると、装置を数多く使用することになります。
治療時間、治療費がその分だけ多くかかります。

【症例2】 前歯が飛び出して、曲ってしまった例

顎は拡がらないと思っている患者さんがほとんどです。
顎が拡がれば歯は抜かずにすみます。

前歯が飛び出して、しかも曲っています。
犬歯の間のスペースが不足しているので前歯が並べません。

まず、前歯を並べるために上顎を拡げます。
装置の真中にネジがあり、装置が少しずつ開くようになっています。
顎は骨で拡がらないと思っている患者さんがほとんどですが、実際は無痛で拡がります。
でも、装置を入れるだけで、ネジを巻かなければ顎は拡がりません。
ネジは痛く無いように少し、少し巻きます。

上顎が拡がり、歯が並べるスペースができた後は歯を正しい位置に並べます。
歯を後ろから並べるワイヤーで並べます。
でも、歯が並ばない理由を考えて下さい。それは歯を使わないからです。
咬む訓練が必要です。
最後の写真は上顎の歯と下顎の歯がしっかりと咬み合っています。
しっかり咬めば、治療器具に頼らなくても自然ときれいな咬み合わせになります。
それが咀嚼(そしゃく)訓練です。

【症例3】 よく見られる症例

この症例の方が多く来院します。
この程度の叢生だと抜歯しか治療法が無いと思われがちですがスペースを作れば歯は並びます。
あきらめてはいけません。

上顎の側方にする事~拡大が治療の基本です。

6ヶ月の拡大です。

このケースは形状記憶合金のワイヤーを装着しました。
ワイヤーはすべての歯をアイデアルアーチ(理想的な歯並び)に移動します。
このケースは2つの装置で治療が終了しました。
通常の「矯正」では歯を抜いて、スペースを作り、このワイヤーで歯を並べます。
床矯正は顎の発育不足の分の顎を拡げてワイヤーで歯を並べます。

【症例4】 犬歯が八重歯になってしまった例

犬歯が八重歯です。
症例3と同じに上顎を拡げました。それでも犬歯が飛び出しています。
これ以上は下顎とのバランスがとれなくなるので側方に拡げられません。

犬歯を後方に移動するしかありません。
犬歯を下げるには奥歯を全部、下げなくてはなりません。
まず第一一大臼歯を装置で後方へ移動します。
小臼歯はゴムで後方に移動します。

臼歯の後方移動が終了しました。あとはワイヤーで歯を正しく並べます。
様子を見ていると、犬歯が生えてこのケースになってしまいます。
絶対に、前歯の歯並びがおかしいと感じたら、治療開始をしましょう。

【症例5】 犬歯の生えるスペースが全くなくなってしまった例

乳歯の犬歯・臼歯を早期に喪失すると臼歯が前方移動して、犬歯のスペースがまったくなくなります。
スペースがないから永久歯を抜くと納得してはいけません。
このような状態でも歯を抜かずに治療できます。

症例4と同じく、犬歯の生えるスペースを作るのに奥歯を後方に移動しました。
そして、ワイヤーを装着しました。
歯を抜かなければ歯並びは治らないとあきらめないで下さい。